2012年11月26日月曜日

職業としてのフードライター……5


『シェフ!三つ星レストランの舞台裏へようこその試写会に行きました。
いや、本当に面白い映画でした。
ジャン・レノ扮する三つ星シェフが、レストランオーナーに嫌われて、星を落としたらクビにする、というのを料理オタクの偏屈な若い料理人達が助ける、というグランメゾンを背景とした「がんばれベアーズ」と言ったら語弊があるでしょうか。
その星を審査に来る料理調査員に向けて、新作料理を考えるのですが……。

映画を見て、フードライターの最大の資質は何だろうと考えました。
まぁ、ライターと名乗るのですから、文章表現は言うまでもありませんが、最大の資質は味覚に対するセンスではないでしょうか?
このセンスというのがまた、問題ですね。
味には全ての人を満足させるものは無いということです。

映画『シェフ!』のレストラン審査員は古い味を認めておらず、最新の「分子調理法」を好んでいるのですが、ジャン・レノ扮する料理人は、伝統の味で長年星を維持してきたので、時代の要請に料理が合わなくなり、ミカエル・ユーン扮する若手の料理人に新作メニューを頼んでしまうのです。
その映画のシーンで、料理人や審査員が料理の素材や調理法や味に対して、的確に表現するシーンが良いのです。

料理屋さんの紹介記事を読んでいて、いつも思う感想があります。
この記事、このライターさんは何を言いたいのか、何を伝えたいのかということです。
フードライターの記事と言っても、ちゃんと署名して書いてあるものから情報記事まで、幅広くあります。
所詮料理記事の感想って、食べた人しか判りませんので、それがただ美味しい”と言われてもピンときません。
落語に「家ほめ」がありますが、何でも新築の家に行ってほめれば、小遣いのひとつも貰える、という内容です。
記事にも家ほめと同じ様な紹介記事がたくさんありますね。
まぁ、情報なので特に目くじら立てるのも大人げないですが、まったく店のホームページのコピーを載せている記事ばかりで……。

記事に書く、書かないは別にして、フードライターの資質として素材や調理法に精通していて欲しい、と思うのは欲張りな注文でしょうか。
料理に対しての美味い、不味いは所詮「食事感想文」で個人の領域を出ないので、その内容に対しての、知識の幅や厚みや体験が表現する“個人の感想を超えて一般化しつつ、さらにその先にあるもの”を読みたいのです。
理想は料理人と同じくらい調理法に精通して、自身でも調理が出来る。
えっ、そんなフードライターがいたら自分で店をしているって?(一部お店をしている人もいないことはないのですが)
極論すれば、フードライターは作り手と読み手の間に介在する“イタコ”のような存在なのでは、とハルコは思うのです。

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