2012年10月9日火曜日

牛肉のドライエイジング


テレビで“やまけん”さんが、NYで牛肉をドライエイジングで出しているレストランを紹介したり、貯蔵法を日本の酪農関係に活かして、肉質を良くする指導をしている報道番組を観ていました。
あれほど固い肉質が、「ドライエイジング(熟成)させることにより柔かく、かつ旨くなるのだという実証番組でした。

その時に2つのことが頭を過りました。
ひとつは、フランスのレヴィ=ストロースの、あまりにも有名な「料理の三角形」の中にある、“なまもの”が自然的変形をして、発酵されたものになるという図式です。
レヴィ=ストロースは、これにより自然に対して火を使う、という料理における人類学的な視点からの考え方により、その後に多くの影響を与えたのでした。
肉等の素材は、自然界に何らかの措置がないまま置かれていると、微生物により発酵腐敗していきます。
世の中(特に日本)では、新鮮至上主義が跋扈していますね。何が何でも、新鮮で新しいものをありがたる風潮に一石を投じたのが、「ドライエイジング」という考え方でした。
普通なら「生で食べるものこそ一番美味しいんだ」と言うところに、やまけんさんの番組では「熟成させてこそ旨くなるんだ」という価値観を視聴者に突きつけていました。

さて、もうひとつ頭をよぎったことは、ハルコはこの「ドライエイジング」した牛肉をわざわざ食べに行っていたことです。
1991年のことで、もう22年も前のことです。パリのレストラン「Jacques Cana(ジャック・カーニャ)」に「ドライエイジング」した牛肉を食べに行ったのです。
元々西洋料理の世界には、肉を熟成させて調理する方法が120年も前からあるのです。
これは、ジビエの肉を熟成させる「faisanduge(フザンダージュ)」や「rassissemen(ラシスメン)」「maturation(マテュラシヨン)」と呼ばる、肉のタンパク質を細菌で分解させて、肉質を柔かくする方法です。
ただ、一歩間違うと熟成なのか腐敗なのかが、難しい線引きです。

このジャック・カーニャはその当時ミシュランの2つ星で、伝統的なフザンダージュの肉を提供する有名なレストランでした。
メインでいただいたのは「ゴーミヨ」で特筆された「牛の骨付あばら肉の蒸し焼き」で、最初に銀盆に乗せた塊肉を見せに来るのです。これで、3週間ほどフザンダージュしているとの説明でした。
牛の骨髄が付いて、甘めのソースの蒸し煮に、ジャガイモのピューレや野菜の付け合わせでいただきました。
肉質は軟らかく、熟成させるとこうなるんだと感じました。
このような熟成した肉が(価格は高くなりますが)、一般にも評価されて行き広がることを期待するハルコでした。

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