2012年7月13日金曜日

アンビグラム・そしてイタリアンの現在

明日7月14日は、フランス革命の発端となったバスチーユ監獄襲撃事件のあった日です。日本では「巴里祭」と言ってますが「Quatorze Juille」のことですね。


と、前振りとはまったく関係なく、昨日は7月12日は天現寺・南麻布に新規オープンした「AMBIGRAM アンビグラム」に出かけました。
アンビグラムを始めた米津さんは、現在の「ドンチッチョ」の石川勉さんが星条旗通りにあった「ベンズィーナ」時代からの長いパートナーで、「トンマジーノ」「ドンチッチョ」と石川さんを支えていたのですが、ドンチッチョから独立して1年で新たなスタイルのイタリアンをオープンさせたのでした。
 話を伺うと、当初は石川勉さん流のシチリア的な料理を提供したかったようですが、双子の料理人伊沢浩久さんがフリウリ、ピエモンテ、パティシエの伊沢和明さんがパリ、ブルターニュでの修行を積んでいるので、相当北イタリアやフランス的なテイストになっていました。

食事をしながら思ったのは、味が優しい、懐かしいという思いを持ちました。
これは、日本・東京でのイタリアンのあるひとつの進化形だと思うのです。
以前から日本のイタリアンの歴史を調べておりますが、第二次大戦(太平洋戦争)敗戦後の「カンチェミリ・アントニオ」や「キャンティ」の前身の「光輪閣」から始まり、昭和30年代の「シシリア」「ニコラス」「アントニオ」「キャンティ」を黎明期とすれば、東京のイタリアンは、1970年代の大阪の万博を挟んでイタリアで修行に行った第1世代から始まります。
その当時のイタリアンは、読んで字の如く「イタリア料理」という大きなジャンルでした。日本人に馴染みやすいローマから南にかけての料理が主で、パスタも乾麺が中心でした。

イタリアでの修行を終えて帰国した料理人達が、それぞれ街場でレストランを開店した1980年前後にイタリアブーム(イタメシ)を成し遂げて、空前のグルメブームになったのが第2世代で、北から南までカバーしてイタリアの食文化を提供することになり、パスタも乾麺からフレスカへと生パスタが認知されてきました。

その後の続く第3世代は、より狭い地域の特長のあるイタリア地方料理を提供し、日本に居ながらイタリアよりイタリア本場の料理が楽しめる様になったのです。
また、輸入食材も規制緩和され、ダイレクトにレストランに出てくるようになり、客自体もイタリアへ行き、本物のイタリアンを理解出来る層も増えました。

しかしそれ以後はバブルも弾け、店舗自体は増えて来ましたが、特に特色の見い出せない第4世代の店が増え過ぎて、イタリアン自体の希少性は無くなり、何だか美味しいんだけれど、ぼんやりした印象でした。

そしてこの所「小さな台所ひらた」で、「イタリアのイタリアンでもなく、日本のイタリアンでもなく、別に進化したイタリアン」を感じました。
これはアンビグラムにも通じる世界で、「エマルジョン(乳化)された料理」の世界ではないかと思うのです。
イタリア、フランス、日本が一皿にエマルジョンされていて、しかし、以前一部でもてはやされた先端の科学的な調理法でもなく、優しい料理の進化だと思うのです。
これからも注目していきたいです。

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