2012年3月19日月曜日

『青春の終焉』

ハルコブログは基本的には食に関して書いてますが、今日は先週の吉本隆明に引き続き、食に関係のない話です。


批評家の三浦雅士さんが日本芸術院賞(恩賜賞も)を受賞されました。
おっ、という感じで新聞の記事を読んでおりました。
受賞対象の一冊が『青春の終焉』という本でしたが、確か随分前に読んでいたなぁと思い出しました。2001年ですから、もうひと昔前ですね。
内容は難しいのですが、「青春」という概念があっと言う間に文化を通して世界に蔓延していき、やがてそれが終焉する過程を描いているのです。

青春も青年も英語では“youth(ユース)となりますが、昔の日本にはそんな言葉は無かったのです。1880年(明治13年)に東京基督教徒青年会が発足し、「ヤング・メン」の訳語で登場するに及び、日本全国に「青春」という概念が広まったのです。
明治になり、日本自体が欧米に追い越せ追いつけの熱気で時代も青春であり、その青春がどこから来てどこへ行くのかが全体の構成です。

また、日本の戦後も、ある意味で熱狂的な青春時代だったという展開です。
ヨーロッパ・イタリアのルネッサンスから出発して、ルソーを媒介にゲーテ、シラー、そして、シェイクスピアへ移行し、ロマン派が生まれ、ロシアで、プーシキン、ツルゲーネフ、ドストエフスキー、トルストイ、チェホーフ……。18世紀に発生した青春という病が、イギリス、フランス、ドイツ、ドイツからロシアへ。今度はロシアから日本へ、日本から中国へ……。ほぼ全世界に青春が席巻したと言うのを論証した本です。

三浦雅士さん青土社の創立から関わり、1972年「ユリイカ」編集長、1975年から「現代思想」の創刊編集長でしたが、その頃青春の(?)ハルコも「現代思想」にかぶれて、創刊号から10数年購読しておりました(実際には判りませんでしたが)。
レヴィ・ストロース、ジャック・ラカン、ミッシェル・フーコ、ロラン・バルト……。と構造主義が華やかな時代でした。それも、「現代思想」で出会ったのです。
特に先駆者のレヴィ・ストロースの「料理の三面体」(その内書きます)の考え方には影響され、その後仕事の論理付けに役立っていきました。
ハルコはいつか、「レシピの考古学」をやりたいと思っています。
この本が出た10年前はバブル崩壊後の疲弊した時代でしたが、今はさらに日本自体が縮小して老年になったのでしょうか。
もうちょっとがんばりたいと、この本を再読して思ったハルコでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿