2011年10月6日木曜日

はてなのとっくり

え~~、寒くなりました。熱燗の美味しい季節ですね。
この所、千駄木は「乃池」へ出没しているハルコでございます。名物穴子鮨に舌鼓を打っておりました。
ハルコは“黒龍”を大きいので頂きます。まぁ、二合といった所でしょうか。黒龍というお酒はコクもあり切れも良いので、お鮨にはようございますね。一本では飲み足りないのですが、大きいのは飲み過ぎで、もう一本は小さい方の徳利でいただくというわけでございます。
二本目の徳利で杯を一杯にして、クゥ~たまりませんせんね~。
えっ、お金? ほっといてください。
と、二杯目を入れたら何だか中身が少ない、えへ。酔っちまいましたかね。
なんて思って、三杯目を入れようとしたら、もうお酒が無くなっていました。
ありゃ、と底を見たら、穴も無いのにお酒がポタポタとこぼれているではありませんか。

ハルコ、思わず「こりゃ、はてなのとっくりや」

ご存知でしょうか。落語には「はてなの茶わん」という演題ががあります。
京都の綾小路に茶屋金兵衛という骨董屋さんがおりまして、非常な目利きです。金兵衛さんが骨董品を見て、「はてな」とつぶやくだけで値があっという間に百両にもなる、という実力の持ち主です。
金兵衛さんは清水の観音様を信仰して毎日お参りに来て、音羽の滝の前の茶屋でいつもお茶を飲んでおります。
その時に出された茶碗を見て「はてな」「はてな」「はてな」……と続けざまに言っておりました。
それを見ていたのが、隣に座っていた油屋さん。
金兵衛さんが帰った後に、茶店の主人に強引になけなしの全財産二両で買い取り、それを金兵衛さんへ持ち込み高値で売ろうとしました。
ところが、どこにでもある二束三文の清水焼だと。
油屋さんは「はてな」と言ったので五百や千両になるのでは……。
金兵衛さん曰く「底に傷もないのにポタポタと溢れるので、はてな」と言っただけと。
二両にもう一両を足して買い取りと言ったが、油屋さんは強欲を出した自分が悪いとすごすごと帰りました。
暫くして、金兵衛さんご贔屓の関白鷹司公のお屋敷に。関白「最近なにか面白い話はないか」とお尋ねになり、実は先日…と「はてなの茶わん」の話を。
関白が見たいと言うので茶わんを取り寄せた所、「不思議な茶わん」だと、短冊にみごとな和歌をしたためてくれました。
これが、公家さんのあいだで大評判に。帝まで茶わんの箱書きに「はてな」と書いてくださりました。
もう大変な騒ぎでございます。この話が大阪の豪商鴻池善右衛門さんが聞いて、是非欲しいと。
しかし、「御筆(帝が書かれてたので)が入っているので売れないと」では鴻池さん千両で預けてと交渉成立しました。
金兵衛さん、油屋さんを捜して半分の五百両を渡したのです。
まぁ、落ちは有りますがご興味有る方は調べるか、落語を聴いてくださいね。
残念ながらハルコが「はてな」と言っても値は付きません。「すみませんね」と新しい徳利に替えられただけでした。
お後がよろしいようで。

●落語とお酒
乃池は近所の普門山全生庵で、毎夏三遊亭円朝の“円朝忌”があり、お客さんの中にも噺家の師匠などのお見えになります。まぁ、そればかりではないでしょうが、常連のお客さんも落語通の方々が多いようですね。
ハルコが「はてなのとっくりや」と声を上げた時にあちこちで笑いが起きました。
いや、さすがみなさま元の「はてなの茶わん」ご存知です。良い店ですね。
ところで、ハルコも落語は大好きでございます。落語をネタにいくつか企画を立てたことがあります。
以前「宝酒造」の酒に合うレシピの仕事をしていた時に、どうせなら酒の出てくる落語を紹介しようと考えました。季節にあう落語を探し短い原稿にするのは苦労しました。「長屋の花見」「試し酒」「青菜」「親子酒」などですが、評判は良かったようです。

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