2011年9月14日水曜日

美味礼賛

続き物の小説を読む楽しみは、その小説の主人公と平行した人生を味わえるという点でしょうか。
昨年はハルコが編集をしている百貨店のPR誌で、作家の加賀乙彦さんに対談をお願いしました。
対談が決まってから加賀乙彦さんの代表作の『永遠の都』を文庫本で(結構厚い!)全7冊読破するはめになりました。
なにせ『永遠の都』(現在絶版)自体が対談の中身でハルコが司会進行役です(トホホ)。
最初の1巻目のなんと進まないこと…。しかし、段々巻が進むと同時に、読む速度が速くなりました。
各巻事に文体が違っており、全体を通して初めて最後の謎を突き止める、という複雑な構成です。この本は世界で一番長い小説ということになっております。
さらに、この7巻のあとに『雲の都』3部作(現在出てます)に最後の第4部を執筆中でまだ完成しておりません。
そこまで読み込むと、主人公を始め出て来る人々は、もう他人とは思えないような感じがしますね。

しかし、作者が執筆の途中で亡くなり、連続して読んでいたのが途切れてしまい、一体このあとはどうなるんだー!! と、大声で叫びたくなるものもあります。
例えば、池波正太郎の『剣客商売』隆慶一郎の『見知らぬ海へ』『風の呪殺陣』などは未完のままで非常に残念です。
ノンフィクション作家の海老沢泰久の『追っかけ屋愛蔵』も絶筆で、これから先がどうなってしまうか…と、悩ましい小説でした。えっ? 何だか時代小説ばかりだって!
ハハハ。なにを隠そう(隠すまでもないですね)ハルコは時代小説ファンなのです。
文庫本レベルで年間200冊は読んでおりますね(この話はまた別の機会に)。

ということで、話は時代小説ではなく海老沢泰久著『美味礼賛』がハルコお薦め本なのです。
『美味礼賛』と言うと、稀代の美食家にして現在に繋がる料理理論の体系を作ったブリア・サヴァランを思い出しますが、『美味礼賛』の元本は『味覚の生理学』(Physiolgie du Goût)という書名です。
海老沢泰久『美味礼賛』辻調理師専門学校を日本で最高の調理師学校にした辻静雄の半生を描く傑作です。
日本のグルメブームの骨幹をしかけ、数多優秀な料理人を送り出した料理界の偉大な指導者です。
もし、辻静雄がいなければ日本の食文化はどうなっていたのかと、考えてしまいます。
是非ご一読を。

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