2011年9月5日月曜日

料理レシピの変遷……『近代料理書の世界』

レシピブックは昔ほど売れなくなり、レシピは今やネットで検索するのが主流になりつつあるのでしょうか。それでも、本屋さんへ行くと沢山ありますね。
今まで、仕事でレシピブックなるものの制作に随分携わってきました。
雑誌の料理ページから料理ムック、単行本、企業のPR誌、食品メーカのレシピ冊子……。
最初はデザインが中心でしたが、自分で編集したり、はたまたハルコのレシピを出したり、食品メーカーの商品でレシピを考案したり…と、レシピ、レシピと門前のハルコ習わぬレシピを覚えるようになりました。

初めてハルコがレシピを書いたのは、笑ってしまう話ですが某広告代理店のY田さんが、何枚かの料理写真を持って来て、「これでレシピカード作りたいので、ヨロシク!」
写真だけですよ、写真だけ! 某大手納豆メーカー(パッケージにおかめの顔が…あっ、判ってしまいますね)のスーパー販促用のレシピカードです。
あるのは料理写真と料理名のみで、誰かに頼めるような予算も無いしどうしたもんか…と考えて、自分でレシピを”創作”することにしました(トホホな仕事ですね)。

まずルーペで写真(アナログなポジですよ)を見て、素材の構成内容の確認から「まぁ、納豆はメインだし、卵焼焼は錦糸卵で、何やらタコやエビが有って、キュウリも有るなぁ。あぁ、ホタテにマグロ、納豆の上には大葉かぁ。む、イクラ!? それにしては小さい、何だろう!?」
と、さながら遺構物の発掘をしているような気分。
これに付いていた料理名が「山海丼」
要するにちらし寿司の上に納豆をのせたものですね。
それが理解出来てから、今度はレシピブックの中から一番近いレシピを探し出し……。
うむ、すし飯を作るだけでこの狭いスペースはもう一杯。すし飯の作り方は“パス!”
あぁ、さっきのイクラの小さいものに似た写真があった「うん。トビコ!?」飛びます!飛びます!なら、二郎さんだが。“トビコ”って何!?(何せインターネットの無い時代の話ですから)
食材事典を見て「トビコ、トビコ、トビウオの卵! これって普通のスーパで売っているのかしら?」
写真だと1人前だけど、こんな面倒なレシピ1人前だけ作る人がいるのかしらん。
分量は納豆1パック50gだから材料は……む、面倒だ!適宜、適宜(文句あるかぁ)!
こんな作業を8レシピ分作るのかぁ!と、頭を抱え込んだ若き日のハルコでした。

それ以来、ハルコのレシピを読み解く能力(?)は磨かれてゆくのでありました。
そして、レシピを見ただけで料理プロセスや仕上がりのイメージの絵を描くという特技が身に付いたのでした。
その頃から、色々なレシピを読み解く趣味が始まりました。
同じ料理なのにレシピが随分違うのは当然として、過去の料理本を読むと現在では考えらえない作り方が出ていたり、増々のめり込んで行きました。
ハルコはこれを『レシピの考古学』と呼んでおります。

そんなレシピの考古学に役立つのが、この『近代料理書の世界』(江原絢子・東四柳祥子著)(ドメス出版)です。
日本の近代の料理本が、1900年以前から戦前の1930年代まで多数紹介されております。
その中で現在でも入手可能な、村井寛の『食道楽』もあります。この本はまたの機会に取り上げます。
約半世紀の料理書の流れですが、現在と比較して見ていくと非常に面白いですね。
食材の有無、冷凍技術の有無、そして、流通が整備されていない時代の食材の保存法など。
また、レシピの基本中の基本、何人分作るのか。大家族時代のレシピから核家族時代のレシピに個食レシピ…と、レシピは時代を反映したアーカイブなのです。

『近代料理書の世界』(江原絢子・東四柳祥子著)(ドメス出版)

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